私たちの専門競技

キツい!楽しい!マイルリレー!日本一が語る、勝つための戦略とバトンのコツ

お疲れ様です!シーズン最終3連戦を迎えながら執筆している吉津です!

23シーズン、アジア選手権や世界陸上など、非常に陸上競技が盛り上がった1年になったのではないでしょうか!

今年は初個人タイトルを獲得しました!


陸上競技には数多くの種目がありますが、今回はその中でも、近年世界大会での初メダルが大きく期待されている4×400mリレー(通称マイルリレー)について、日本選手権リレーと全日本インカレで優勝経験のある吉津が考える事をコラムにしてみます!

この記事を読み終わった後に見るマイルが、1段階2段階も面白くなっていれば幸いです

では早速、初めていきましょー!

そもそもマイルとは…?

高校生から始まる1人400mを4人で繋ぐリレー種目のことです。

合計距離が1600mになるため、1マイル(1609m)から「マイル」だったり「マイルリレー」と呼ばれたりします。

日本陸連の紹介画像の完成度が高すぎたので拝借。他の種目も見てみてほしい!!

冬に各地で行われる駅伝をつい見ちゃう方は是非1度見て欲しい、スーパーハイスピード駅伝といっても過言ではない、見て面白い、走って楽しい花形種目のひとつになります。

たくほ

オーストラリアで試合に出た時は、フォーバイフォーで伝わりました。検索したら四輪駆動車しか出てこなかったので自信はないです…

誰がどこを走る?

4×100mリレーと同じく、各走順を走る際のルールでしたり、期待される役割が異なります。

1走

個人400mと同じく、指定されたレーン上を走ります。階段状のスタート位置が400mの時よりも離れる為、しっかりと自分の走りをして、より速く次走者に渡す必要があります。意外にも勝負に直結するのはこの走者な時があります。縁の下の力持ちですね

2走

最初の100mのみ指定されたレーンを走り、バックストレートからはオープンレーンになる特徴があります。200m地点の通過順が第3走者のスタート位置に影響し、最後の直線は真っ直ぐに走る方がロスが無い為、バックストレートの位置取りが非常に重要な意味を持つ事になるからこそ、スピードの高い選手が任されがちな走順になります。

3走

1周をオープンレーンで走ります。最終走者の4走までの繋ぎ区間と考えられがちですが、3走で勝負を決めに行けるチームは強いチームです。なぜなら、より重要な区間を任せた上でこの区間に勝負を決めれるほど強い選手を配置することが出来るから。勝ちに行くなら、”3人目”が重要です。

4走

1周をオープンレーンで走る最終走者になります。ゴールした時点で勝敗が決まる走者になるので、しっかりと決め切る能力が必要になります。どこで先頭に立つのか、バトンを貰う前からイメージし、それを実行できる走力と頭が必要となります。ほとんどの場合、エースは4走を任されるかと思います。

また、細かいですが全体のルールとして

  • バトンを受け渡す際に落としてしまった場合、渡す側の走者が拾って渡さなければならない。
  • 3.4走者は全走者の200メートル地点での通過順に内側から並び、スタートする。
  • チームで走者としてエントリーしていない人でも、その大会のプログラムに名前のある人から2人まで追加でエントリーができる。
  • 予選-決勝とラウンドが進む際、前ラウンドに出場した選手から2人まではエントリー可能な選手に変更しても良い。

等があります。

最も大事な走順はどこか!と聞かれると、どの走順も記述した様な抑えるべきポイントがあるので、答えるのが難しいですが、もし私が走順を決めるべき立場にある場合は「流れ」を掴めるかどうかに注目して組み立てると思います。

初めて出てきたワードです。「流れ」
ではそこまで重要視する「流れ」とは何か。

流れに乗れ!

具体的に定義がある訳ではありませんが、同時に走る8チームの先頭集団の場所を「流れ」と表現しています。

“流れに乗れた”のであれば、先頭集団にいながらレースを組み立てることができたという事。反対に“流れに乗り切れなかった”のであれば、それは何かしらの理由で先頭集団から少し離れてしまった事を指しています。

流れ解説
引用:日本インカレ陸上2023 男子4×400mリレー決勝(陸上 Track & Field)

何故流れに乗ることが重要なのか。大きくふたつの理由があると考えています。

① ゴールは1600m”地点”だから

そうです。非常に当たり前ですが、ゴールはひとつの点になるので、その点から見て近くにいる方が有利になります。レース全体から見ると、先頭にいる方がそもそも有利なのです。

② 3.4走者はスタート位置が変わるから

3.4走者は前走者の位置によって内側から順に並ぶことになります。そこに目掛けて最後の直線を真っ直ぐ走れる1番目に通過したチームと、最後の直線を斜めに膨らんで走らないといけない8番目に通過したチームとでは単純に距離の差が出来てしまいます。

ここまでで「流れ」に乗ることの重要性はご理解頂けたかと思いますが、ではどのように「流れ」を掴む組み立て方をするのか、について考えていきます。

誰がどこで走る?

最も走力の高い選手をどの走順に置くのかで、流れの掴み方や勝ち方が変わってくると考えています。

エースが1走

逃げ切り戦法になります。
特筆すべき点としては、1走で流れにさえ乗れればその場のノリで2.3.4走が実力以上を発揮出来る可能性がある点です。アドレナリンって、すげぇんです。

エースが2走

2走時点で貯金を作る戦法になります。
1.2走に速い選手を配置し、3.4走で耐え忍ぶパターンか、2.4走に速い選手を配置し、流れから脱せずに食らいつくパターンのどちらかかと思います。

エースが3走

昨年のオレゴン世界陸上での日本代表チームは、3走にエースのウォルシュジュリアン選手を配置しましたね。大学生シーンだと、2019全カレの東洋大、2020年全カレの日本大学が3走で勝負を決める配置をしていたかと思います。
他走順に走力の劣らない選手を配置できた時にできる、上振れ戦法かと思います。この配置ができた時は勝ちが非常に近いかと思います。

エースが4走

アンカーで勝負を決める王道の戦法です。
それまでの3人でしっかり流れに乗れていないと、エースが勝負すらできずに終わってしまう事が懸念点になりますが、チームの大黒柱が最後に構えててくれる事ほど安心して走れることはありません。チームが安定する、そんな戦法かと思います。

勝つためには3走

各走順に走力の高い選手を配置したパターンを簡単に解説しましたが、吉津が考える「勝つために重要な意味を持つ」のは3走だと考えています。

特に大学シーンでは、どの大学も2人位は走力のある選手、1人はスピードを持った100.200mの選手を揃えてきます。その中で勝つためには大砲のようなエース1人か、3走で勝負を決め切れる4人目の存在が重要になると考えています。

走る人は何を考えている?

ここまで、マイルを見る人も走る人も知って欲しい視点としてのお話がメインでしたが、ここからは実際に走る人が何を考えるべきか、を少しお話していきます。
もちろん見る人が読んでも面白いように頑張るので、まだまだお付き合い頂けると幸いです。

それでは、後半!

400mの中でどのポイントを抑えたら上手く「流れ」を捉えれるかについて、走り始めてから走り終わるまでのお話になります。

バトン、大事なんです。

まずはバトンパス。
4×100mリレー(以下、4継)では時間をかけて練習をすると思うのですが、あまりマイルでのバトン練習に時間をかけた方は多くないのではないでしょうか?

実はかなり重要なポイントが2つあります。

1つ目は、4継と変わらないのですが、『バトンのスピードが落ちない受け渡しをする』という点です。加速が出来ていない状態で受け渡しをしてしまうとそのぶんロスが生まれるので、前走者をしっかり引き付け、自分が加速した状態でバトンを受け取る意識を持ちましょう。

最近の日本代表チームはここを徹底的に練習し、結果を残しています。

2つ目は、3.4走者に当てはまるポイントですが、『前走者が競ってきた際にそのチームより前で貰う』という点です。前走者がラストの直線で頑張ってきた流れをバトンパスで台無しにしてはなりません。ワンテンポ前で動き出し、競ってきたチームより前でバトンパスを行うことで自分自身で流れをつくることができるようになり、レースを有利にすすめることが出来ます。

バトンの持ち方

マイルの時、どんなバトンの持ち方をしていますか?

4継とは「すぐ隣を他の人が走っている」状況が異なります。つまり、バトンを叩き落されてしまう可能性があるということです。

撮影協力:東洋大マネージャー中澤くん

バトンは通常このように持つかと思いますが、この状態で普通に走ると、バトンが腕に当たるだけで割と簡単に吹き飛びます。それを無くすためには

このように、前腕に近い角度で持つことが必要になります。

このような、腕そのものに隠してしまう形の高校もありましたね。

前腕との角度が無い方が良いんです!

バトンが吹き飛んでしまっては勝負どころではありません。負ける要素を限りなく少なくする為、この様な所にも注意してみても良いと思います!

200m地点目掛けて

バトンをしっかり受け取れたら、次のポイントは200m地点にあります。2.3走者はここでの通過順によって次走者のスタート位置が変わるため、ここまでに何番目にいるべきかを即座に判断しながら走る必要があります。

ここで注意すべきは「200-300区間のブロックを考慮した位置取りを行う」事です。
「ブロック」とは、自分のひとつ前を走る選手Bが自分より遅く、Bより前を走る選手Aとの差が生まれてしまう事を指しています。

「ブロック」をさせない為には、選手Bより200の通過時点で前を位置取るか、選手Bをコーナーで外側から抜かす必要があります。

コーナーで外側に膨らむのは単純に走る距離が長くなってしまうためなるべく避けたいので、200m地点で選手Bより前にいる事が理想になります。

前にいる選手にどの時点で追いついて、どのタイミングで抜かして先頭に立ち、次走者に渡すのか。その判断のひとつのポイントが200m地点にあると考えています。

チームメイト目掛けて

バトンを確実に貰って、200m地点を目安に流れを組み立てつつ走ってこれたら、もうラスト100mです。ここはもう、頑張るだけです。死にものぐるいで次の走者目掛けて走り抜けましょう。

たとえアンカーでもゴールしたらチームメイトが待っています。どの走順になってもチームメイトの胸を借りて!!

終わりに

さぁ、ここまでの長丁場に最後までお付き合い頂いた皆さん、本当にありがとうございました。

陸上競技を経験している方もここまで細かく教わることもないだろうと思いながら執筆しました。皆さんがマイルに挑戦する際の入門書として、マイルを観戦する際の手引きとして、役立ってくれれば何よりです。

ABOUT ME
2022年12月入社。陸上競技の400mをやっています。競技も仕事もいちばん目指して頑張ります!応援よろしくお願いします。