トランポリン競技を見たことがあるあなたは、こんな疑問を感じたことはありませんか?
何が基準で点数が決まるの・・・?
私も競技を始める前は全く知りませんでした。
紹介が遅れましたが、私はトランポリン競技を16年やっていて、全日本選手権での優勝経験があり、今も現役で活動している中村優希です。
少しでも競技人口を増やして、大会自体をもっと世間の人知ってもらいたい、興味を持ってくださった方々にもっと楽しんでもらいたいという思いで、今回の記事を書きました。
この記事を最後まで読むことで、次回トランポリンの大会を見た時に
あーこの点が良かったねー/良くなかったねー
など、少し踏み込んだ視点でトランポリンを見ることができ、何も知らないよりも10倍は楽しむことができるので、ちょっと長いですが是非最後までご覧ください!
今、時間が無いからざっくり知りたいという方はこちらの記事へ!↓↓↓
1.採点基準(その1)
トランポリン競技は体操やフィギュアスケートと同じ「採点競技」です。
特徴と基準になる4要素
数名の審判員の前で、10種目の異なる技を連続で実施し、より高い得点を出した人の勝ちという、至ってシンプルなルールです。
ただ、トランポリンの特徴は、失敗したらやり直しNG!本番一発勝負の世界です。
例えば10種目目で青いマットに触れてしまい、9種目分しか点数にならなかったら
その時点で他の選手とまともに戦える点数にはなりません。文字通り「おしまい」です。
ここ一番の場面で狙っていきたいけど、攻めすぎて失敗したらスタートラインにすら立てない、超メンタル競技なんです!
そんなトランポリン競技の採点基準で必要になる要素は下の4つです!
- 演技点/Eスコア(綺麗にやる)
- 難度点/Dスコア(回転数・難しい技の構成をする)
- 跳躍時間点/Tスコア(滞空時間)
- 移動点/HDスコア(中心で演技する)
簡潔に言うと、難しい構成を、高く・美しく・真ん中でやったらいい点数が出ます。←ただこれが半端なく難しい。(笑)
合計得点は、演技点+難度点+跳躍時間点+移動点-ペナルティの減点で出されます。
だいたい世界のトップ選手で男子は59点~62点、女子は54点~57点くらい出します!
滞空時間について
トランポリンの魅力はなんといっても他の競技では見られない高さ!
この「高さ」ですが、なんと滞空時間(足先がトランポリンの台から離れてからもういちど着くまで)の秒数がそのまま点数になってしまうんです~。
つまり、同じ演技をする選手が2人いたとして、A選手が15秒で行える構成をB選手が16秒でできたら、その時点で既に2人の選手の得点差は1.0点!
0.1点を狙って取りに行くこの競技で1点の差は大きい!
トランポリンの中心で演技し続ける
2016年のリオデジャネイロオリンピックが終わってから正式にルールに加わったこちら。
中心で演技をしないと減点されていってしまいます。なんと酷な・・・
減点無しの部分は縦横約1mずつの範囲(真ん中の四角)のみ!
だいたい女子のトップ選手は6~7m、男子のトップ選手だと7~8mくらい上に跳んでいるので的がいかに小さいかわかると思います。
上の図、白い部分がトランポリンのベッドの図なのですが、0.0(減点無し)の範囲せっま!w
選手はなるべくここの0.0、減点無しの部分を狙って演技をします。
演技中に前後左右へ移動してしまった場合、1種目ごとに着台をした場所によって、上の図のように0.1~0.3の減点をされてしまいます。
ちなみに0.3減点の場所まで跳んで行ってしまったとき、選手の心境としてはかなり焦ります。だいたいの選手が「あっ終わった」ってなる場所です。(笑)
中心で演技をすることも大事になるので、選手は難しい宙返りをしながらも、真ん中から動かないように1回1回宙返りが終わるごとに場所の確認をしているんですね~すごい!!
2.採点基準(その2)
採点基準その1ではトランポリンで必要になる4つの要素の説明をしました!
その2では、減点基準と加点基準を説明します。
減点基準
その1で説明した4つの要素の中で減点になってしまうのは下の2つです。
- 演技点(Eスコア)
- 移動点(Hスコア)
・演技点での減点
演技点(Eスコア)は減点方式です。
選手それぞれ、審判一人につき10.0点の持ち点があり、一種目ごとに0(減点無し)~最大0.5減点されてしまいます。
例えば・・・
・演技中に膝や腰が曲がってしまう、つま先が伸びていない・・・など姿勢が乱れてしまう
・スムーズな動きではないぎこちない動きになってしまう
・宙返りの終わる位置がギリギリ、ジャンプの最後まで技をやっている
こういった動きをしてしまうとすぐに減点されてしまいます!
いかに基本に忠実、かつスムーズに技を実施できるか、審判に「上手い!」と思わせることができるかが鍵です!
厳密に言うともう少し細かいルールがあって点数の採用方法とかも決まってるんですが長くなりすぎるのでそれはまた今度!w
この人は少し足がバラバラしてるね!なんとなくリズムが一定じゃないね!
といった視点で見ていただけるといいかもです~
・移動点での減点
移動点(Hスコア)も、演技点と同じく、減点方式です。
最初の持ち点は10.0点で、一種目ごと、移動をしてしまう度に0(減点無し)~最大0.3の減点があります。
加点基準
その1で説明した4つの要素の中で加点の要素があるのは下の2つです。
- 難度点(Dスコア)
- 跳躍時間点(Tスコア)
・難度点
難度点(Dスコア)は、難しいことをすればするほど加点されます。
回転の数、またはひねりの数が増えると難度点も増えていきます!
体操のG難度は点数高い!フィギュアスケートの4回転は技術点が高い!みたいなイメージと一緒で、トランポリンも回転・ひねり数を複雑な構成にすればするほど難度点は高くなります。
大方の難度点の考え方は以下の通りです。
- ひねり(横回り)を1/2加えるごとに0.1点加点
- 回転(縦回り)を1/4加えるごとに0.1点加点
- 姿勢によって加点もある(タック(抱え込み)姿勢よりも、パイク(屈伸)姿勢、レイアウト(伸び)姿勢の方が点数が高くなる)
- 3回転すると0.1の加点が加わる
ん~上の文字だけだといまいちわかりにくいですね(笑)
とりあえず縦にも横にもぐるんぐるん回ると難度点もどんどん増えていきます。w
例えば・・・トリフィスという名前の「前方3回宙返り半分捻り」をした場合、
タック(抱え込み)姿勢の場合は1.7点の難度点ですが、
パイク(屈伸)姿勢になると姿勢の0.1加点×3回分の0.3点が加わり、2.0点の難度点になります。
1種目ずつ、上記のような点数が加算されていくので、演技全体の構成の難度点は10種目分で、
男子だと16点後半~17点前半(高い選手だと18点オーバー)、女子だと13点後半~14点中盤(高い選手で15点オーバー)くらいの点数になります。※トップクラスの点数です
・跳躍時間点
跳躍時間点(Tスコア)は、空中にいる秒数=そのまま点数になります。
簡単に言ってしまえば同じ難しさ(Dスコア)の構成を全く同じ正確さ(Eスコア・Hスコア)で行ったとしてA選手は17秒、B選手は16秒で演技を実施したら、2人の点数の差は1点になります。
世界のトップクラスの選手でだいたい男子は17秒~高い人で19秒前後、女子は15秒後半~高い人で17秒近くとびます。
3.競技の種類
トランポリン競技は、下記の種類があります!
- 個人
- シンクロ
- 団体
- ダブルミニトランポリン
- タンブリング
それぞれの競技についての概要はこちら!
4.大会スケジュール
ここでは、ざっくりとした国内大会でのスケジュールを紹介します。
トランポリンの国内大会は地方大会レベルだと1日で終わりますが、全国規模だと3日間が基本スケジュールになります。
公式練習日は各チーム毎に時間が割り当てられ、30分~1時間程度、会場で練習する時間があります。
とはいえ、複数人で順番をまわしながらの練習になるので、回数でいうと5回~8回くらい。選手は少ない練習回数の中で会場の広さや照明、トランポリンの跳ね上がりの感覚などを掴まないといけません。
これだけ広さも照明の感じも違うので、トランポリンの規格は変わりませんが、感覚としてはやっぱり多少違いがあります。おそらくこの辺りはどの競技でもそうですよね(笑)
予選では、出場する全選手が演技を行い、上位8人が決勝に進みます。
本番前に数十分アップしたのち、第1演技と第2演技を1回ずつ演技します。失敗してもやり直しは無しです!
予選で勝ち上がった8人が決勝で演技を行います。決勝では第2演技のみの実施で勝敗が決まります。
本番は予選と同様に1回きり、一発勝負です。
5.第1演技と第2演技
トランポリン競技は、全国規模の大会や正式な大会の予選では、第1演技(規定演技)、第2演技(自由演技)の2回、演技を行います。
2回の演技の総合計点で準決勝や決勝に進む選手が決まります。
予選でどちらかを失敗してしまうとほぼ次に進めないので予選では2回演技を成功させないといけません。
第1演技
第1演技は4種目分のみ難度点に入れることができます。
なので4種目は難度点を稼げる複雑な技を組み込み、残りの6種目は簡単な技にして演技点を稼ぐのが一般的な戦略です。
上でお伝えした「演技点」で、どのくらい0(減点無し)を取れるかでかなり点数に差が出てきます。
トランポリンを初めて見る方や、あまり宙返りを見慣れていない方は第1演技のほうが見やすいかもしれないですね(第2演技はみんなくるっくる回るので…w)
第2演技
第2演技は自由演技とされていて、難度点に組み込む種目制限がありません。言い換えると、10種目自分のできる限界ぎりぎりまで難しい技を入れてOKということです。
でも実際は、難度点を上げすぎると失敗のリスクや演技点など他の採点項目の点数が取りにくくなる傾向があるので、基本的に無謀なチャレンジはしませんw
あくまでも総合の点数を一番取りに行ける演技構成にします。
とはいえ、演技もきれいにし尽くして、演技構成の完成度がばっちりになってしまったら行きつく先は技の難しさを上げるというところになるんですがね…w
私の場合は「失敗するリスクを背負ってまで無理やり上げる点数ではないけど、すべてやりつくしてしまったら行きつく先は難度点アップ」という認識でやってます…。
6.オリンピック後のルール変更について
トランポリンはオリンピック開催後にルールが改正されることが多いです!
FIGの出した東京オリンピック後の新ルールでは、
「第1演技が無くなり、第2演技を2回実施した後、良い方の得点を採用される」
というルールに変更されるそうです!
上で説明した第1演技が無くなってしまうんですね~!これは大きなルール改正!
難しい演技を2回実施する事になるので体力が要りますね!!
選手によって戦い方も変わってくると思います。楽しみ~!
7.みんなが絶対に勝ちたい大会
国内大会で選手が勝ちたい・結果を出したいと考える大会をまとめました。
- 年齢別選手権(5月)
- 日本代表最終選考会(6月)
- 全日本選手権(10月~11月)
- ジャパンオープン(12月)
5月の年齢別選手権は、その年の世界選手権の日本代表1次選考会も兼ねています。
上位16名は翌月開催の日本代表最終選考会にコマを進めることができます。
日本代表最終選考会はその名の通り、その年の世界選手権の日本代表を決める大会です。
ここで代表入りできると、ワールドカップや世界選手権に出場する切符を掴めるので落としたくない大会です!
例年10月~11月に行われる全日本選手権は日本一を決める大会です。
出場資格は13歳~、全国規模での予選会が行われ、男女ともに点数の上位65名が出場できます。
その中から、個人競技・シンクロ競技・団体競技で日本一を決める大会です。
ジャパンオープンは例年12月に行われる年内の締めの大会です。
ジュニアの年代の子たちは年齢別の区分で競うので、ジャパンオープンのみの人数の規模としては全日本選手権より小さくなりますが、上位選手はほとんど出てくるのでレベルは全日本と同じくらい高いです。
上記の大会で、ナショナルの基準点を超えるとナショナルランクが獲得できるので大事な大会になります。
ここでしっかり点数を出せるとナショナル選手の仲間入り!
8.まとめ
ここまで読んでいただいた皆様、いかがでしたでしょうか?
選手は、ただくるくる回っているだけでなく色々なことを考えながら跳んでいます。
この記事を見てくれたあなたがもっともっとトランポリン観戦を楽しんでくれることを願っています・・・💞
それではまた次回の記事でお会いしましょう!